otに対してのセキュリティが重要であることの理由を説明する前に、近年になって注目を集めている背景を見ておく必要があります。インターネット通信が普及しはじめた頃からitのセキュリティは話題になっていたにもかかわらず、近年までotに関してさほど注視されて来なかったのは、所属するネットワークの性質の違いです。不特定多数がアクセス可能な環境であるit機器に対して、otの場合は外部通信回線から遮断されている閉じたネットワークに属していたからです。独自のOS、独自の通信プロトコルによって構成されていてサイバー攻撃を受ける機会がそもそも少ない状態でした。
otのセキュリティが重要性を帯びてきたのは、インターネット通信の発達とそれに伴うツールの発展です。産業用機械・設備をコントロールするという基本動作だけでなく、情報を吸い出して在庫・備品の管理や現場のパフォーマンス管理などを実施して、効率化および収益の最大化を図ることができるようになっていきました。このデータの吸い上げのためにはクラウドに接続したり、社内LANにアクセスして共有する必要があります。閉じたネットワークから、オープンな環境へとその身を置くことになるためサイバー攻撃の脅威に晒される可能性が出て来たという訳です。
加えて2015年の12月に、ウクライナの電力会社におけるotがサイバー攻撃を受けるという事件が起きたのも注目を集めるきっかけとなっています。この攻撃により大規模な停電が発生してしまい、都市部の機能に大きく影響を与えました。産業用制御システムは、一度でも攻撃を受ければシステムを扱う企業だけでなく社会インフラにまで被害が及ぶという訳です。こういった事件や諸般の出来事を受けて、セキュリティ強化が大きく注目を浴びています。